女将は少し驚いていたが、そっと白い手を差し出した。 私はそれを両手で包み込むように握った。 その手は思ったよりも冷たかった。 何故かいとおしく感じた。 彼女がとてもいとおしい存在に思えた。 私より十センチも背の低い彼女がそっと目を上げて私を見た。 その目に涙が溢れていた。 私は握った手を放し、彼女を抱き締めた。 手のひらに彼女の着ている着物の上質な絹の手触りが心地よかった。 メモリー 10 「癒」
悲しみを癒すのにも、「抱きしめる」と言う行為は効果を上げる。